リクルートキャリアが就活生の「内定辞退率」予測データを採用側の企業に販売していたという問題。求人情報を取り扱う我々としても対岸の火事とは思えません。
法的な問題点はさておき、閲覧履歴やアンケートの回答と実際の行動履歴を組み合わせて人物像を特定することを「プロファイリング」といいますが、この手法そのものは何年も前から様々な場面で活用されています。典型的な例を挙げれば、アマゾンのおすすめ機能(これを買ったひとはこれも買っています)やフェイスブックの知り合いかも機能もこれにあたります。
データベースに蓄積された情報から、第3者が プロファイリング をすることでその人の人となりや行動特性を特定してより効果的なアプローチをすることが可能になります。当社のQJナビでも「この求人を見ている人はこんな求人も見ています」といった機能もありますし、行動特性に合わせたリスティング広告やSNS広告を活用しています。どこの企業も当たり前のように使っているプロファイリング。今回のリクルートキャリア問題は一体何が問題だったのでしょうか?法律、就活生、企業3つの切り口から考察してみます。
まずは、法律です。職業安定法は個人情報を適切に扱うよう求めており、外部提供には本人の同意が必要とされています。今回の件は利用約款にその旨が書かれていたものの、明確な説明がないまま同意させていたとして東京労働局がリクルートキャリアへ調査に入りました。個人対企業間の契約の場合は消費者保護法制により個人の権利が強固に守られています。
次に就活生です。近年の新卒採用市場は空前の売手市場です。しかし、新卒採用支援市場では就活生が使用できる媒体は寡占化されていて、一定の媒体を使わざるを得ない弱い立場にいます。そうした環境の中で登録した学生の行動データから手に入れた情報がプロファイリングされ選考に利用されていたのです。(合否には使わないことにはなっていたようですが、使用したかどうかは誰にもわかりません)また、その精度にも疑問が残ります。もしも誤ったプロファイリングによってレッテルを貼られた就活生は、どれだけ頑張っても採用されなくなってしまいます。
最後に企業です。当社も採用面接をしていて、「第一志望と面接では話したが実はそうではなかった」ことや「内定承諾書を数社に提出していました」ということがあるため、今回のような情報に需要があることはわからなくもありません。本件は提供するリクルートキャリアと購入した企業が直感的に、「これはまずいのではないか」と気がつくことができなかった企業の倫理観の問題なのではないでしょうか。どんな企業でもふとした弾みで道を踏み外してしまう人の脆弱性を現しているように思います。
個人的にはプロファイリングやAIによるスコアリングの流れは止められないと思います。その流れの中で、高い倫理観を持ってよりよい社会を作り上げていくことがこれからの企業に求められていることではないでしょうか。